素朴な見た目、美しく優しい色合い-琉球ガラスとは?-
沖縄には、沖縄の気候や風土、歴史、琉球王国時代から交流が続いている諸外国の影響を色濃く反映した、独自の文化が存在しています。数多くの伝統工芸品にも強く表れており、琉球漆器ややちむん(※)、琉球ガラスといったうつわも例外ではありません。
琉球ガラスには100年以上の歴史があるとされ、素朴な見た目と美しく優しい色合いから、沖縄旅行のお土産品としても高い人気を誇っています。
今回は、琉球ガラスの歴史や特徴、おすすめの琉球ガラス製品についてご説明します。
※沖縄のもう一つの焼き物「やちむん」については、こちらの記事をご参照ください。
琉球ガラスとは?
琉球ガラスとは、沖縄を代表するガラス工芸品で、沖縄ガラスとも呼ばれます。穴の空いた竿を持って息を送り込み、回しながら成形する、いわゆる「宙吹き技法」と、予めくり抜いておいた型(るつぼ)にガラスをはめた状態で、息を吹き込んで成形する「型吹き技法」で製作されます。
第二次世界大戦後、米軍が使用したコーラやビールなどの空き瓶をリサイクルし、色合いや厚み、気泡をあえて生かした、独特な雰囲気が特徴です。
琉球グラスの歴史
琉球ガラスの歴史は明治時代の中期ごろまで遡ります。長崎や大阪からやって来たガラス職人たちによって、那覇西町にガラス工場が建てられたのが始まりとされます。当時から第二次世界大戦中までは、以下に挙げるものを作っていました。
ランプのほや
角形・丸形の駄菓子瓶
蝿取り器
漬物入れ
投薬瓶
石油壷
第二次世界大戦中、那覇西町にあったガラス工房は爆撃で破壊され、ガラス製造もストップしていましたが、戦後に再開。しかし、戦後の物資不足でガラスの材料である「屑ガラス」が思うように集まらなかったため、米軍の捨てていったコーラ瓶やビール瓶を屑ガラスの資材として再利用することを思いつき、1950 年代中頃から徐々に薄い青、緑、茶色などの色がついたガラスを製造するようになりました。これが、琉球ガラスの始まりです。
その後、進駐軍、米軍関係者とその家族が工房に見学に来ていたことから米軍関係者の本国への土産物として人気を集めました。1983(昭和58)年に6つの工房が琉球ガラス工芸協同組合を設立以降、さまざまな名称で呼ばれていたガラスは「琉球ガラス」という名前になったのです。
<琉球ガラス略年表>
引用:琉球ガラス工芸の文化 高良松一(沖縄県立博物館)沖縄県立博物館紀要第15号, 37― 50, 1989年をもとに、弊社作成
琉球ガラスの特徴
当初は米軍関係者たちから注文を受けていたため、琉球ガラスはアメリカナイズされた一風変わった見た目をしていたようです。アメリカの占領が終わり、沖縄が日本に返還されると、琉球ガラスのデザインも徐々に日常使いできるうつわへと変化していきました。
では、琉球ガラスの特徴とはどんなものなのでしょうか。
気泡があること
他のガラスと琉球ガラスが決定的に違うのは、ガラスの中に気泡があることです。当時はコーラやビールなどの空き瓶を細かく砕いて作られた屑ガラスを使っていたため、ガラスにも色がついていたり、気泡があったりしていました。
現在では、水あめ状に溶かしたガラスに炭酸水素ナトリウムを混ぜて気泡を作っています。気泡の種類も細かいものから大きなもの、粒状の気泡が無数に散らばっているものから大きな気泡を線のように描かれているものなどさまざまです。
素朴な見た目と色合い
琉球ガラスは、他のガラスのうつわに見られるような、特有の透明感や冷たい感じはなく、素朴な見た目と色合いが特徴です。色合いは最初、溶かしたコーラやジュースの空き瓶の色をそのまま利用していましたが、現在では3種類の原料(珪砂・ソーダ灰・石灰)を混ぜたものに、酸化コバルトや酸化マンガンの着色剤を調合して、琉球ガラスならではの美しい色彩を生み出しています。
また、色の出方も着色剤の調合量や使用する着色剤によって違うため、一つ一つのうつわの色に特色が表れます。
一つ一つの形が異なること
琉球ガラスは、明治時代から続く伝統的な製法「宙吹き技法」と「型吹き技法」の2種類を基本的な成形方法とし、玉状になったガラスを吹くことで成形します。宙吹き技法は鉄管の先にガラスを巻き取り、口で吹きながら成形する方法で、型吹き技法は、予めくり抜いておいた型(るつぼ)を利用して成形する方法です。
製品一つ一つの形が微妙に違って、味わい深いうつわになっているのは、「宙吹き技法」と「型吹き技法」を用いて成形しているためです。
琉球ガラスはどこで買えるの?
昔はガラス工房に直接出向くなどして購入していました。時代が進むにつれて、ガラス工房以外に琉球ガラスを取り扱うお店が増えていき、沖縄に直接買いに行かなくて済むようになりました。
では、どこで琉球ガラスを購入できるのでしょうか。
琉球ガラス村
琉球ガラス村は沖縄本島の最南部のまち・糸満市の、ひめゆりの塔の近くにある、沖縄県内最大級の手作りガラス工房です。敷地内にはガラス工房の他、工房で実際に作った琉球ガラスを購入できるショップ、琉球ガラスづくりを体験できる教室など、琉球ガラスに親しむための各種施設が揃っています。
ガラス工房・ギャラリー
お気に入りの作家さんがいれば、ガラス工房やギャラリーを直接訪ねてみるのも、一つの手です。訪問の際は、一般に開放しているかどうかを必ず確認しましょう。ガラス工房やギャラリーを訪れて、実際に商品を手にとってみたり眺めたり、作家さんと話したりしていると新たな発見があるかもしれません。
オンラインショップ
ガラス工房やギャラリー、ショップなどが開設しているオンラインショップの利用も、琉球ガラスの入手方法の一つです。じっくり時間をかけて、いろいろな作家さんの作品の写真を眺めながら、気に入った商品を購入できるのがメリットです。
おすすめの琉球グラスの商品
toracieでは、さまざまな工房さんや窯元さんから直接陶器を買い付けたものを、オンラインで販売しています。ここでは、toracieおすすめの琉球ガラスをいくつかご紹介します。
気泡で施された、渦状の模様が美しい、ガラス三角鉢です。サラダや冷たい麺類、フルーツなどさまざまにお使いいただけます。ガラス工房ロブストは2004年にうるま市に設立されたガラス工房で、色の主張を抑えた作品を多く制作しています。
飲み口から底に向かって徐々に淡いスカイブルーが広がる、ロックグラスです。海の中で見るような、細かい気泡が特徴で、何とも涼し気な見た目をしています。
「露の玉」という名前が示す通り、脚の部分に一つだけ閉じ込めた大きな気泡が特徴のグラスです。シンプルなデザインで、普段使いにピッタリです。ガラス工房てとてとは2011年にうるま市で設立されたガラス工房で、再生ガラスを原材料に、主に普段使いできるうつわを制作しています。
沖縄の青い空を表現したような、美しいスカイブルーのガラスで、ぼてっとした見た目と滑らかな肌触りが特徴です。この商品を作っているガラス工房清天は、沖縄県読谷村(よみたにそん)にあるガラス工房で、数多くの作家さんがここから巣立っています。
上記の商品以外にも、多様な琉球ガラスを取り扱っております。下記リンクからぜひご覧いただき、お気に入りの一品を見つけてみてください。
作家・窯元の食器や雑貨 通販│toracie トラシー│産地別│琉球ガラス
まとめ
第二次世界大戦中に米軍が上陸し、1972(昭和47)年に返還されるまでアメリカの占領下にあった沖縄。琉球ガラスは、沖縄のそうした歴史がもたらした産物でしたが、米軍に販売していた頃は日常使いできるうつわとしてではなく、空き瓶を再利用したアート作品として評価されていたそうです。
そういったところに思いを馳せながら琉球ガラスを使ってみると、また違った魅力を感じられるかもしれません。
参考図書・文献:
「琉球ガラス工芸の文化」高良松一(沖縄県立博物館)沖縄県立博物館紀要第15号, 37― 50, 1989年
「琉球ガラスの文化史」清水友理子 『一橋研究』37巻3,4合併号 2013年
「暮らしの図鑑 ガラス 楽しむ工夫×基礎知識×注目の作家・ブランド50」みつま ともこ 翔泳社 2020年
「暮らしの図鑑 民藝と手仕事 長く使いたい暮らしの道具と郷土玩具61×基礎知識×楽しむ旅」翔泳社 2020年