萩焼の使い始めやお手入れ方法について
「萩焼」といえば、土の風合いを生かした形や色を「そのまま」味わう素朴さが魅力の焼物。茶器として発展してきた萩焼は、自分で「育てる」器の楽しさがある器とも言われます。萩焼は吸水性の高い柔らかな器。使い込むほどに色が変わるのは、器に入れたものの色が器に入るからです。今回は、萩焼の使い始めからお手入れ方法を詳しく解説します。萩焼を長く使い、美しく育てるために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
萩焼の特徴
「萩焼からお茶が漏れた」「縁がボロボロになってしまった」……実はこんなお問い合わせがよくあります。
萩焼は、大道土(だいどうつち)と見島土(みしまつち)、そして金峯土(みたけつち)という3つの土を混合して作ります。これらの土の配合により、吸水性の高い柔らかな器が生まれるのです。柔らかいということは、目が粗く、土の粒子の間が締まっていないということ。つまり、目に見えない細かいすき間がたくさんあるのです。さらに器の表面にかかる釉薬には「貫入」という細かなヒビがあります。そのため、水もれはよくあることですし、手荒に使うとすぐ欠けてしまいます。
「そんな器、欠陥品では?」と思われるかもしれません。しかし、萩焼はそれを上回るメリットがあるからこそ、長く受け継がれてきました。例えば、柔らかい手触りや、使い込むほどに味わい深くなる見た目。器の中に空洞があるため軽く、熱が伝わりにくく、持ったときに火傷しにくいことなどです。端が欠けた器も「味」として愛されてきました。漏れがなくなるまで茶を注ぎ、それで使い込むほどに味が出て、価値が上がるのが「萩焼」の特徴なのです。
萩焼・使い始めのお手入れ
萩焼はもともと茶器として発展してきた焼物です。その脆さや水漏れこそが「味」だと言われても、日常的に使いたい場合は水漏ればかりしてたら困りますよね。そこで、最近では、あらかじめ水漏れ防止のために撥水加工をしている器も増えてきました。
しかし、気に入った器が加工されていない場合は自分でする必要があります。古くから行われている方法は、お鍋やボウルに重湯やフノリ、片栗粉を熱湯で溶いたものに器を漬けて半日~1日程度浸透させる方法です。すき間に成分が浸透することで漏れを抑えることができます。いずれも食用なので安心です。
・重湯:ご飯に対し10倍程度の水で煮てペースト状にしたもの
・フノリ:海藻から作られた板状の糊。煮ることでペースト状に
・片栗粉:水溶き片栗粉を熱湯で溶くことで、とろみがでます
器に十分浸透したら、水洗いし、風通しのよいところで自然乾燥させます。場合によっては一度の作業では漏れが止まらないかもしれません。その時は何度か繰り返してみましょう。
また、使っているうちに水洗いですき間に浸透した成分が流れ出てしまうと、また水漏れしてきます。使い初めだけでなく、使っている途中でも水漏れが気になるようであれば、この作業を行いましょう。
萩焼・日常のお手入れ
萩焼はとても繊細な器です。日常的にもお手入れに気を付ける必要があります。
萩焼を使う前
萩焼は、重湯などで水漏れの対応をしていたとしても、貫入などには料理や飲み物の水分が染み込みやすい状態です。そのため、使う前には半日くらい水にひたしておきましょう。その後、十分に乾燥させてから使うのがポイントです。
つまり「萩焼を使おう」と思ったら、その前日から準備する!と覚えておいてください。
萩焼を使う時
萩焼は耐熱食器ではありませんので、オーブンは使用できませんが、電子レンジは使うことができます。ただし、飲み物や食べ物の水分を吸収しやすい器なので、保存用には向きません。
萩焼を使い終わったら
萩焼を使い終わったら、器の汚れや油分をペーパータオルで拭き取り、柔らかいスポンジを使って中性洗剤で洗いましょう。たわしなどは器を傷つけるので使わないでください。優しく洗うのがポイントです。なお、基本的に食洗器は使えません。萩焼は漂白液の使用ができませんので、器に汚れが染み込む前に洗う必要があります。
カビ防止のために、すすぎ終わったあとの器は熱湯に通してから、風通しの良い場所で十分乾燥させましょう。殺菌したい場合は鍋に水をはってから萩焼を入れて煮立たせる煮沸消毒がオススメです。煮沸した場合は、水で冷やすことはせず、自然に冷めるまで待ちましょう。冷めたら器を取り出してしっかりと拭いて表面の水分を取り、自然乾燥させます。
日常的にお手入れが必要な萩焼は「扱いが面倒」と思われるかもしれません。しかし「手のかかる子ほどかわいい」と言われるように、これらのお手入れを前提に使うことで、愛情が湧き、その変化を「味」として楽しめるようになります。「器を育てる」ことを教えてくれるからこそ、萩焼は17世紀から400年以上にわたって愛されてきたのです。ぜひ、次の器には萩焼を使ってみませんか?
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