ふだん使いの素敵な器・小石原焼の魅力
独特な文様が特徴的な小石原焼。江戸時代より前から続く、日本が誇る伝統工芸品のひとつです。大小様々のお皿やお茶碗、日常使いの生活雑貨を作り続けてきました。最近では、伝統技術を生かしたモダンなデザインを提供する窯元も現われ、新たな進化を遂げています。この記事では、小石原焼の歴史や特徴を解説。その魅力や良さに迫ります。
小石原焼とは?
小石原焼(こいしわらやき)は、福岡県の朝倉郡東峰村(とうほうむら)で作られている陶器。約350年の歴史を持つ工芸品です。東峰村は、大分県の県境、福岡県中央部の東端に位置しています。博多・小倉から電車で約2時間、修験道の霊山としても知られる英彦山 (ひこさん) をはじめ、標高1000ⅿ級の山々に囲まれています。この山々から取れる赤土が、小石原焼の原料となっているのです。
小石原焼で作られるのは、主に日常使いの生活雑貨。独特の幾何学的紋様が特徴で、陶器でありながら磁器のように薄さと軽さを持ち合わせています。あたたかく素朴な風合いの中に上品さを感じさせる、美しい形と色味が魅力です。実用性がありながら美しいその様は、柳宗悦らに「用の美の極地」と称えられました。
福岡のお土産品としても人気が高いほか、博多駅前の都ホテル博多や、THE BLOSSOM HAKATA Premierなど、高級ホテルのアメニティにも採用されています。
小石原焼の歴史
小石原焼の歴史を語るには、まず「高取焼(たかとりやき)」「中野焼」の説明からはじめる必要があります。
はじまりは、豊臣秀吉の朝鮮出兵まで遡ります。1592年のことです。
黒田長政は、朝鮮出兵の際に日本に陶工・八山を連れ帰りました。その後、1600年の関ヶ原の戦いの手柄を受け、筑前藩主になった長政は、1606年に鞍手郡の高取山の麗に窯を築かせます。これが「高取焼」の始まりです。八山は「高取」の名前にちなみ「高取八蔵重貞」と名を改めました。その後、高取焼は、高取山から窯場を転々とすることになります。
時は流れ1665年。高取焼は小石原に窯を移しました。また、八蔵の孫である八之丞も小石原地区中野で質の良い陶土をみつけ、中野皿山に開窯。そして1682年、藩主の黒田光之が肥前伊万里より陶工を招き、 中国風の磁器を伝え、その頃すでに小石原にあった高取焼と交流することで中野焼が生まれました。この中野焼が、昭和になって「小石原焼」とよばれるようになったのです。
明治時代になると、1929年にバーナード・リーチや柳宗悦、濱田庄司らが小石原村へ訪問し、小石原焼を「用の美の極地」と賞賛。小石原焼は民藝ブームの波に乗って人気を高めました。
戦後、1958年にブリュッセルで開かれた万国博覧会において、小石原焼はグランプリを受賞します。さらに、1975年には陶磁器として日本で初めて伝統的工芸品に指定されました
。
江戸時代から長きに渡り日本の陶芸界に大きく影響を与え続けた小石原焼。生活の器として愛され続けたその伝統は今も息づいています。
小石原焼の特徴
小石原焼の特徴は、陶器でありながら磁器のように薄さと軽さ、そして規則的にった独特の幾何学的模様。そこには様々な技法が使われています。
飛び鉋 (がんな)
赤土の上に白色の化粧度をかけ、ろくろを回しながら、カンナの刃先で規則的に化粧土を削いで幾何学文様を彫る技法。小石原焼の独特の模様が作られる。
刷毛目 (はけめ)
ろくろを回しながら、化粧土が乾く前に刷毛で等間隔に模様を入れていく技法。「打ち刷毛目」とも言い、丸い皿だと花びらのように見える模様が作られる。
櫛目(くしめ)
ろくろを回しながら、木材を独自に加工した道具を用いて文様を描く技法。石庭の枯山水を思わせる模様が作られる。
流し掛け
ろくろを回しながら、表面にスポイトなどで化粧土や釉薬を垂らすように掛けていく技法
打ち掛け
ろくろを回しながら、柄杓などで化粧土や釉薬を浴びせ掛ける技法
ぽん描き
ろくろを回しながら、釉薬を竹の容器から少しずつかけていく技法
小石原焼はどこで買える?
人気の小石原焼。手に入れるためにはどうしたらよいのでしょうか。
直接窯元に行く
小石原には、現在小石原焼・高取焼を合わせて44軒の窯元があります。窯元でショッピングができたり、陶芸体験を提供しているところもあって
自力で回るのが難しい場合は、現地の観光ガイドさんに案内をお願いすることもできます。
東峰村ツーリヅム協会では、小石原焼・高取焼の窯元めぐりや小石原焼の買い物のお手伝いをする「小石原焼観光ガイド」を行っています。認定のガイドさんなので安心です。
料金も1人1時間500円~と格安。
参考:東峰村観光情報サイト「東方見聞録」
http://toho.main.jp/kamamoto.html
http://toho.main.jp/yakimono-gaid.html
小石原焼陶器協同組合(窯元の一覧があります)
https://tenku-koishiwara.com/about/
道の駅で買う
国道211号沿いにある「道の駅 小石原(こいしわら)」では、小石原焼の窯元が出店する「陶器コーナー」があり、買い物が楽しめます。
ドライブがてら立ち寄ってみては。
http://www.qsr.mlit.go.jp/n-michi/michi_no_eki/kobetu/koishiwara/koishiwara.html
小石原焼の陶器市
小石原では、5月と10月の春秋2回、「民陶むら祭」を行っています。
小石原焼・高取焼も扱う陶器市です。通常価格より2割引きとお買い得な商品が並ぶとあって、県外からも多くの人たちが訪れる人気のイベントです。
コロナ禍の2021年春季は「ネットで民陶祭」が開催されました。
インスタグラムでの開催なので、チェックしてみてください。
https://www.instagram.com/koishiwara_marche/
toracieで扱っている小石原焼の窯元
全国から素敵なうつわを買い付け、オンラインで販売するセレクトショップ「toracie」では、現在以下の小石原焼の窯元さんの作品を取り扱っています。
これからも拡充予定です。どうぞお楽しみに!
鶴見窯元
https://toracie.net/products/list?category_id=123
1974年に開窯。現在、二代目として息子の和田義弘さんが、伝統の技と意思を継いで作陶されています。素朴な土の温もりを持つ小石原焼の伝統を守りながら、実際に自宅で使ってみたくなるようなデザインが魅力です。
翁明窯元
https://toracie.net/products/list?category_id=121
1983年に開窯。現在は親子2代で作陶されています。
。「伝統や技法に縛られすぎず新しい世界を切り開いていきたい」と、小石原焼の伝統技法である飛び鉋を用いながら、独自に生み出した水玉等の模様を組み合わせて、親しみのあるデザインに仕上げているのが特徴です。
やまさん柳瀬窯
https://toracie.net/products/list?category_id=55
創業から約350年、栄誉ある伝統を受け継ぐ窯元です。暮らしにやすらぎと潤いをもたらす上質の民陶をお届けするために小石原の伝統的な手法をベースに独特の色付け、絵付けを実践。伝統と現代様式が溶け合った作品作りをされています。
早川窯
https://toracie.net/products/list?category_id=46
福岡県・小石原で「刷毛目・打掛・飛び鉋」といった伝統の技法で作品作りをされている早川窯。現代の暮らしに沿うように作られた「ココット」が人気の窯元さんです。